男女合同

 男女合同の文化祭の打ち上げ。その会場で老若男女が混じり合う。
 あの綺麗な黒髪の真面目そうな女子が、頬を赤らめながら話している奴は、つい最近二股を掛けていたのがバレて女子にぶん殴られていた男だ。
 あの胸がでかい割にロリ顔のため嫌らしい感じがしないショートカットの少女が身体を寄せている男子は、付き合っている女の子に直ぐに暴力を振るうことで有名なDV野郎だ。
 そんな奴等が、可愛い女子とイチャイチャしている。
 でも、どうだ? 会場はまったく盛り上がらない。

ため息

「聞いてますか?」
 呆れたように訊く茜。それに、正直に答える。
「宮崎ってところまでは」
「・・・・・・宮崎くんについては、それ以上聞かない方が良いと思います」
 と、言うことは、やっぱり俺が関係しているんだな・・・・・・。
「じゃあ、聞かないから言わせてくれ。――すまなかった」
「身勝手すぎますよ、その台詞は」
「だから、和奏には言わない。でも、どうしても言いたいから、茜には言わせてくれ・・・・・・」
 はぁ。とため息が出た。どうやら俺は、また誰かを代わりに死なせてしまったらしい。

宙に浮かぶ紙垂

 宙に浮かぶ大量の紙垂。それから外に餓鬼は出られない。
 地下を通られたら、包囲できないので、地下通路の外を取り囲むように配置したんですけど。そこから外には出ませんね。餓鬼。
 人は大体が逃げ切っています。器人の方々が用意した安全エリアにいるので、大丈夫でしょう。
「問題は、逃げ遅れてしまった方々です」
 拓、あのビルの四階!
 あの路地裏!
 あの店の中!
 俺は茜の指示するように動いた。いや、正確には[餓鬼]を動かした。
 次々に俺は餓鬼を支配していく。足りなくなった空き缶は、無くなる度にゴミ箱から拝借した。渋谷駅はゴミ箱が多くて助かる。

家に電話を

 茜がスマホを取り出し、家に電話を掛ける。茜が家の人と受け入れの調整をしている。
 茜って、頼りになるよなぁ・・・・・・。
 こういう時、俺はつくづくそう思う。茜は、ピンチの時とか、非常事態の時とかにものすごく強い。こういう時には、授業でバレーのスパイクを顔面に受けてぶっ倒れる、ダサい茜の片影はない。
電話が終わると、茜はブレザーのポケットにスマホを戻して、代わりに薄いスカーフを取り出した。
そのスカーフは小さかったけど、茜が霊力を注ぎ込むと大きなマントになった。

和奏の側に

 いつも俺が和奏の側にいる。どこに行くときも一緒。
 そんな感じにしているから、和奏はあまり告白されることが無い。もちろん、最近の男子達の草食性というか、意気地のなさも関係しているような気がするけど、それでも、やはりランキング上位の割に、アプローチされることが少ない。
 それも何もかも、俺のお陰だ。
 俺のお陰で、変な奴に告白されて面倒くさいとか、他の娘が好きな男子に告白されて気まずいとか、そんな感情を抱かずに済んでいるんだ。ちょっとは俺に感謝をして欲しい。

人が良い

 先生って、人が良いですね。
「そうかな?高校の時まで、付き合い辛いって陰で言われていたけど?」
 そうなのかな?と飛鳥先生は呟いた。ってか、『陰』って・・・。
「でも、話しやすいと思います。少なくとも、僕にとっては、自分の家族より話しやすいです」
 家族って言っても母親しかいないけど、とは言わなかった。
「そっか、ありがとう」
 と飛鳥先生は素直に喜んで、少なくとも喜んだようにしてくれた。そして、思い出したように、あ、そうだ、と呟いて、

無理をしなくて

「無理をしなくて良いんだよ?」
 次の日、つまりゴールデンウイーク最終日、僕等はまた5人で昼食を摂っていた。短かった休みも今日で終わり。
「他人に合わせようとし過ぎると、こいつみたいに『風見鶏』になっちゃうし」
 久米村さんが、葉月さんを心配して、僕に悪口雑言の限りを尽くす。
「大丈夫。今まで通り、自分の好きなようにしか生きません。ただ、せっかく貰えるんだったら、貰えるものは貰っておこうと、ただそれだけです」
「辛くなったらいつでも相談するのよ」
 と、紫藤さんは少し強めの、でも愛情に溢れる口調で言った。

モテ男くん

モテ男くんのたっての願いによって、僕は生徒会副会長になった。仕事は、生徒会長の相談役。実態は、ご察しの通り生徒会の雑用担当だ。毎日生徒会室に行って、仕事があったら手伝う。それがあの時、本当に可哀想な奴だと思って助けようと思った、その両親に対する最低限のマナーだと想っている。今日も簡単な仕事を受注してこなし、部屋をでる。まだ30分くらいしか経ってない。2クエスト目からだったら参加できるだろうか?そう思いながら生徒会室を後にした。

慰めの言葉

あの時の私は、どんなことを思っていたのかを、ほとんど忘れてしまった。優名もあの人に、振られたのだから、きっと辛いはずなのに、どうして私を慰められたのか、どのように私を、泣き止ませてくれたのか、全く私は覚えていない。

このことは、心無い事だと、思われるかもしれないけど、でも、忘れてしまった。ただ、私が、忘れていないのは、真っ赤に染まった湖の水に映しだされた顔が、酷い有様だったことだ。

その酷い顔が、あの時に、私が振ったことに激怒した人の顔に、酷似していた事だ。その顔の醜さを、私は一生記憶しているだろう。

トロフィーやメダル

トロフィーやメダルは貰うと非常に嬉しいものです。みんながあなたに賛辞を言います。これをあなたはとても嬉しく感じます。もちろん、みんなの注目が恥ずかしいかもしれません。それがずっと努力した成果だったら誇らしく思うでしょう。感謝の気持があなたを支配するかもしれません。母親、父親、お兄さん、お姉さんそういう人たちへの感謝。他の参加者に罪悪感を抱くかもしれません。表彰台ではそんなごちゃまぜの気持ちを感じているでしょう。

トロフィーとメダルがこの喜びに華を添えます。トロフィーとメダルなんて本来は無用な物です。何にこれらがつかえるのでしょうか。誰がトロフィーをコップ代わりに使うでしょう。でも、あれを貰うと確かに嬉しいとみんなが思います。私達はなぜあの本来無用なものをこんなにも嬉しく感じるのでしょうか。誰もがそれを求めているからでしょうか。持っていることがステータスになるからでしょうか。持っているのが格好良いからでしょうか。どれか一つではなくそれら全てが理由である気がします。

それらすべての感情が少しずつ集まってあの感情を作っているのでしょう。トロフィーやメダルは貰った人だけの物です。それらは、他に人にとっては無用な物です。なぜなら、それらは本質的に無価値だからです。それらは貰った人にとって、プレミヤ以上の価値を持ちます。大切に大切に一生保管する人もいます。学校や会社ではガラスケースに入れていたりします。何の役にも立たないものは排除されるのが現代です。しかし、そんな風潮の中であっても、一見無駄なトロフィーやメダルは残り続けるでしょう。